はじめに
ブラックな歯科医院に就職した歯科衛生士が、知らず知らずのうちに違法な業務を日常的に行っていた──。
そんな話が、現場では珍しくありません。
たとえばある歯科衛生士は、転職先で院長から「前の職場での業務内容を書き出して」と言われ、
真面目に書いた結果、歯科医師法違反の内容が含まれていたことが発覚。
その場で厳重注意を受け、信頼を回復するまでに多くの時間がかかりました。
これは他人事ではありません。
就職先の選び方ひとつで、あなたのキャリアが“違法”で塗りつぶされるリスクまであるのです。
第1章:マニュアルのない歯科医院は“就職失敗”の温床
新人の歯科衛生士が指導マニュアルもない職場に就職してしまうと、まず「何をやればいいか分からない」という混乱に直面します。
先輩スタッフによってやり方が違う。
院長の指示も曖昧で、“慣習”だけがルールになっている。
その結果、以下のような問題が起こります:
- 学校で学んだ内容が全く活かせない
- 質問しても「自分で考えて」と突き放される
- 判断ミスをしても、フォローがない
このような環境では、歯科衛生士としての成長どころか、心が折れるだけです。
第2章:ブラックな職場では孤立といじめがセットで起きる
ブラック企業的な歯科医院では、労働環境も劣悪です。
- 有給が取れない
- 診療時間外の残業が常態化
- スタッフ同士の対立や無視などの人間関係トラブルが多発
特にマニュアルのない職場では、「この人の機嫌を損ねるとやばい」といった人間関係の地雷が多く、新人の歯科衛生士が孤立しやすい傾向にあります。
第3章:ブラック歯科医院で覚えた“業務”が違法だったという現実
さらに深刻なのは、覚えたことが「違法だった」と後で気づくケースです。
たとえば──
- 医師の指示なしで口腔内を処置
- スケーリング以外の治療どころか根管治療などまで任される
- 点数の“水増し”を指示される
これらはすべて、歯科医師法や保険診療のルールに抵触する行為です。
さきほど紹介した歯科衛生士のように、前職の業務を書き出しただけで「危険人物」と見なされてしまう場合もあります。
転職先での再教育や信用の回復には時間がかかり、場合によっては採用取り消しや即時解雇という結果にもなり得ます。
第4章:良い歯科医院を見分ける3つのポイント
では、ブラック歯科医院を避け、安心して働ける職場をどう見つければいいのでしょうか?
以下の3つの点をチェックしましょう:
- 歯科衛生士向けの業務マニュアルや研修制度があるか
- 採用前に見学・面談でスタッフの雰囲気を確認できるか
- スタッフの離職率・定着年数が公開されているか
これらの情報は、求人サイトや紹介会社、または医院の公式サイトから得られます。
“働く人の立場”に配慮している歯科医院は、採用時点で違いが見えてきます。
おわりに
歯科衛生士として働くあなたが、ブラックな職場で違法な業務を覚えさせられ、キャリアを潰される前に、自分を守る行動を取ってください。
- マニュアルがない職場は要注意
- 人間関係に依存した環境は避ける
- 就職前に「法的な視点」で業務内容を確認する
あなたが正しい選択をすれば、歯科衛生士という資格は、もっと可能性のある武器になります。
マニュアルや研修が整備された医院のメリットについての記事はこちらもご覧ください。
著者:白瀬(歯科医師)
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